コラム

地域を視る「虫の眼」、「鳥の眼」、「魚の眼」③ 公民連携と新たな公共サービスのイノベーション

2017.07.20

ジャパンシステム株式会社 コンサルティングアドバイザー
淑徳大学コミュニティ政策学部准教授 矢尾板俊平

自治体コンシェルジュ協議会の発足

7月4日(火)に、「自治体コンシェルジュ協議会」が発足しました。協議会では、自治体や地域が抱える課題について、産官学連携、公民連携を通じて、その解決策を共に考え、共に解決していくための「コーディネーター」の役割を果たすことを目指しています。これは課題(ニーズ)とその課題を解決するための知恵、ノウハウ、技術との「マッチング」を行う機能を果たしていくというようにも言い換えることができると思います。

旅行先で、「今夜、こんな料理を食べたい」、「このお店に行きたい」、「ここに遊びに行きたいけど、どうやって行けばいいの」、こんなことを思ったときに、ホテルのコンシェルジュサービスに相談すると、その地域でおススメの料理を紹介してくれたり、お店の予約をしてくれたり、さらには遊びに行くために、交通手段の案内をしてくれたり、タクシーを予約してくれたりします。自治体や地域の皆さんにとって、「いま、こんな課題があるのだけど」ということがあれば、気軽に「自治体コンシェルジュ協議会」にご相談いただけると、抱えておられる課題解決のお役に立てるのではないかと思います。

今回、自治体コンシェルジュ協議会の発足にあたり、山中光茂氏(前三重県松阪市長)とともに、代表を務めさせていただくことになりました。私自身は、実務家ではありませんが、自治体や地域の皆さんが抱えておられる課題の解決方法を一緒に考えさせていただければと思います。また、自治体コンシェルジュ協議会の事務局を、ジャパンシステム株式会社さんにお引き受け頂くことになりました。

公共サービスのイノベーションを生み出す

自治体コンシェルジュ協議会は、公民連携のプラットフォームでもあります。自治体の仕事を民間企業が請け負う、受注するという時代では無くなってきたと思います。また、そうしたことを前提にしたビジネスモデルも成り立たなくなっていく可能性があります。これは人口減少下の中で、自治体の財政的な余力が弱くなっていく、ということだけではありません。IoT、AIやロボット、ドローン等の技術が進化していく中で、世の中の仕事そのものが変化していくことでしょう。これまで「地方創生」と言うと「人口問題」に注目をしてきたわけですが、私たちは、こうした「技術」の進化、さらには「ソフト資本」の蓄積にも目を向けなければなりません。(ここで言う「ソフト資本」とは、サービスの質を高めナレッジやノウハウの意味です。)

例えば、交通過疎地域における移動の問題。自動運転技術が進化し、行き先を入力するだけで、車が自動的に、その場所に連れて行ってくれるかもしれません。そうなれば、自動運転技術が搭載された自動車をライドシェアできるようにすれば、もしかすると、公共交通の問題は解決できるかもしれません。買い物も、インターネットで注文した商品がドローンで運ばれてくるかもしれません。(実際に、千葉市は国家戦略特区に指定され、自動運転技術やドローン技術の実用化に向けた実験が行われています。)

ビッグデータを活用し、分析すれば、例えば、観光客が何に関心があり、どのようなサービスを望んでいるかを把握することができるでしょう。それによって、ニーズに合ったサービスを提供することができるかもしれません。ここで、サービス産業が蓄積してきたサービスの質を高めるためのナレッジやノウハウ等の「ソフト資本」を活用することで、観光客の感動を創造し、その地域の「応援者」になる可能性もあります。それによって、リピーターとなり、もしかすると、「ふるさと納税」を生んだり、移住を促進していくかもしれません。ここで地元の農業や漁業と組み合わせれば、まさに「地方創生型」の6次産業を生み出すかもしれません。「地方創生」とは、新たな公共サービスのイノベーションを生んでいくことであると言えるのです。

言い換えれば、地方創生の「鍵」は、プラットフォームの中で、「オープン」に、様々な民間企業、団体、大学等の研究機関が持つ技術やソフト資本を集積し、自治体と連携していくことで、新たな公共サービスを開発していくことであると言えます。私が「自治体コンシェルジュ協議会」に期待したいことは、こうした公共サービスの「オープン・イノベーション」の場としての役割を果たしていくということです。

公民連携を進めていくために必要なこと

公民連携とは、「公共部門の役割を民間部門に移す」ということではなく、「公共部門の役割を民間部門も一緒に担っていくこと」、「民間部門が持つナレッジやノウハウを公共部門において積極的に、主体的に活用していくこと」であると思います。

ここで注意をしなければいけないのは、企業間でも企業文化が異なるように、自治体の文化、企業の文化、大学の文化等、公民連携とは「異文化交流」であるということです。自治体の論理、企業の論理、大学の論理、それぞれの論理や文化において、何が正しくて、何が間違っているということはありません。ただ、この「異文化」の「壁」を乗り越えなければ、公民連携、協働、共創を行っていくことは、本質的には難しいだろうと思います。

それでは何が必要なのか。第一に「多様性」の理解です。お互いの文化、論理や考え方を頭ごなしに「否定する」のではなく、お互いの文化、論理や考え方を理解し、共通理解を得ながら、「創造的な解決」を目指すという姿勢です。第二に、こうした共通理解に基づき、「ルール」や「仕組み」を作るということです。第三に、「議論を避けない」ということです。直接的な議論はせず、第三者に「愚痴」をこぼしたり、苦情を伝えるということも往々にして見られます。

確かに、一見、この方が人間関係を壊さないように見えるかもしれません。しかし、実は、直接的な議論を避けることは、相手に「不信感」を高まらせ、創造的な解決方法ではないのです。伝えるべきことはしっかりと伝える。これが連携、協働、共創を進めるために、最も必要な「信頼」の醸成には欠かせません。

「自治体コンシェルジュ協議会」の取り組みに、ご関心をお持ちの方は、ぜひ事務局にご連絡ください。お待ちしております。

自治体コンシェルジュ協議会事務局連絡先

事務局 :〒151-8404 東京都渋谷区代々木1-22-1 代々木1丁目ビル
ジャパンシステム株式会社内 自治体コンシェルジュ協議会事務局
Mail :concierge@japan-systems.co.jp

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