マンション管理・ビル管理を主事業に、建設、警備、運送、コールセンター、保険代理店など幅広く事業を展開する大和ライフネクスト株式会社は、デジタル化やデータ利活用を全社的に推し進める中で、データ仮想化ソリューション「TIBCO® Data Virtualization(以下TDV)」によるデータ統合管理と、「TIBCO EBX® Software(以下EBX)」によるマスターデータ管理をスタートさせました。ここではTDV、EBX導入の経緯と現在の活用ぶり、今後の展望についてうかがいました。
大和ライフネクスト株式会社 様
TDV・EBXで実現する全社共通データ基盤の確立とその飛躍的改革
導入ソリューション
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マンション管理・ビル管理を軸として多角的にさまざまな事業を展開
―ご所属先と、担当されている業務について教えてください。
天田氏:デジタル統括本部のデジタル推進部とデジタル運用部の課長を兼務しています。
いわゆる情報システム部的な部課は従来、管理本部に含まれていたのですが、約3年前に経営層のDXに対する強い意志のもと、デジタル統括本部が立ち上げられ、会社自体がデジタル化をもっと加速させたいという方針で動いています。
安川氏:社内システムの運用保守を行うデジタル運用部 IT保守課に所属しております。私はTDV導入のプロジェクトリーダーを務めています。
崎山氏:同じくデジタル運用部 IT保守課に所属しておりまして、今回はプロジェクトリーダーとして主にEBXの導入に携わりました。
天田氏:当社の主事業はマンション管理・ビル管理ですが、他にもさまざまな事業を多角的に運営しています。例えば建物のメンテナンス、警備員派遣、事務所移転の支援、コールセンターやホテル運営のノウハウ提供、保険代理店、浄水器などの物販……といった具合で、今後もさらに事業を拡大していこうとしているところです。
肥大化したシステムを統合するには、データの在り方から考え直す必要があった
―今回は基幹システム刷新プロジェクトの一環としてTDVとEBXをご導入いただいたとのことですが、事業内容のお話から「きわめて多角的に事業を手掛けられている」ことがその背景として大きいのではと感じました。
崎山氏: そうですね。当社の基幹システムには大きく3つの課題がありまして。1つは「マンション管理に特化した設計が、拡張した事業の業務内容に合っていない」こと。2つ目は「15年以上改修を重ね続けて肥大化・複雑化したいわゆる『レガシーシステム』であること」、3つ目は「事業拡大が想定されていなかったので、他のシステムと連携できる造りになっていない」ことでした。
―具体的にはどのようなことで困っていらしたのでしょうか。
天田氏:基幹システムは多角化する事業に対応できる柔軟な作りにはなっていなかったため、新しい事業がそこにフィットしないとなると、別のシステムを立てることになります。こうしてさまざまなシステムが乱立してしまい、その間でデータをつなぎ渡し、マスターデータをバケツリレーして……という具合で複雑化していました。つぎはぎだらけで保守性が低く、改修の都度の影響調査が大変な状態でした。
この状態のシステムを統合するためにはデータを整理し、データの在り方も考え直そうというところから「データ共通基盤」という考え方につながりました。
当社に限らずよくある話だと思うのですが、情報システム担当者の稼働を圧迫する業務のひとつが「データを抽出して欲しい」という各部署からの依頼です。
「概ね1日1件程度」聞くとさほど多くないように見えますが、データの構造などを読み解きながらSQLを作成するので、すぐに渡せるものではなく、限られた人員の中でやっていくのは厳しい面もありました。
安川氏:実は「自分で好きにデータを抽出できるなら、やってみたい」と思っているユーザーもいましたが、各システムのデータベースをまたいでのデータ抽出ができないなど、仕組みが込み入っているのでなかなか実現できなかったのです。
天田氏:そこでデータ利活用をもっとユーザーサイドに寄せ、「データを使いたい人が自らデータを入手できる」部分を増やしていくと、「データ共通基盤」が活きてくるだろうというのが取り組みのスタートになりました。
マスター管理に特化し拡張性も高いEBX、Spotfireとの連携にも期待できるTDV
―プロジェクト立ち上げ時の体制はどのようになっていたのでしょうか。
崎山氏: 当社では5人のプロジェクト体制を組みました。プロジェクトにはプロジェクト推進のエキスパートに業務委託で入ってもらい、プロジェクトを進めていきました。私もインフラ設計を中心に推進しながら、業務にも少し関わりました。
加えて取引先マスターの主管部門である経理財務部を中心に、取引先マスターの利用部門である事業部とも連携しながら進めました。
―ここまで多角的に事業を展開されていると、取引先マスターで扱うデータの種類もかなり多かったのではないですか。
崎山氏:まず「請求先」は、大まかには「法人・個人・組合」の3種類です。例えばビルなどの管理を受託しているオーナー企業様、物販を購入されている個人のお客様、マンションの管理を受託している管理組合様です。
天田氏:そして「支払先」は主にお仕事をお願いしている「協力会社」ですね。例えば足場を組んでいただく企業様、電気工事をお願いする企業様……ということで、ジャパンシステム様も当社のお支払先として取引先マスターに含まれています(笑)。
今回取引先マスターを基幹システムから切り離すにあたっては、データの見直しも同時にやりながら進めてきました。
今後のデータ利活用のため、データモデルの再定義、また、外部の法人企業データベースサービスと突き合わせて、データのクレンジングをしながらマスターを切り出していくといった具合です。
―さまざまなツールがある中で、EBXとTDVを選んでいただいた決め手はどのようなことだったのでしょうか。
崎山氏:EBXはマスター管理に特化していて拡張性も高かったことと、ライセンス体系等の条件面が決め手になりました。
安川氏:データ統合管理については、TDVで2社、他の製品で1社から提案をいただきました。TDVももう1製品も、機能面ではほぼ拮抗していたのですが、ご提案内容の差が大きかったですね。ジャパンシステム様は、組織や権限変更が多い当社の運用事情を踏まえ、活用スコープやその方法にまで踏み込んだ具体的な提案をくださっていた。さらに当時BIツールの導入も併せて検討していたので、Spotfire®(以下Spotfire)との連携、つまり将来的なデータ活用を踏まえたご提案が決め手になりました。
他にも、当社が利用しているデータベースやツールと連携できる点や、先にEBX導入が決定していましたので、同じブランドの製品のほうがなにかと便利だろうという考えもありました。
―その後、TDVとEBXはどのように利用されているのでしょうか。
天田氏:TDVは今現在、まだ社内での検証段階にあります。というのも、まずは現場の社員にデータ利活用に必要な知識がないと、本質的なデータの民主化までたどり着けないだろうと。いわゆる「ツールの使い方」だけではなく、「データに対する考え方」も含めた教育を試みているところです。
とはいえ、せっかくのTDVなので、当初の構想と違う用途ですが、クラウドとイントラ内の環境をつなぎ合わせる、いわゆる「データハブ」としてTDVを利用しています。
例えば「クラウド環境上に構築したシステムから、イントラにある基幹システムのデータベースをTDVを介して参照させる」といった使い方ですね。クラウドと社内ネットワークの間を、TDVが提供するRESTやOData形式のインタフェースでHTTPプロトコルでデータ連携するといった活用です。
多数のデータベースをまたいだビューも作れるので、例えば「既存のプログラムから、クラウド上に用意したシステムA・Bについて、どちらも似たようなテーブルを持っているので、それをつなげた形で参照したい」となった場合に、わざわざ両方見に行かせず、ビューの中でそれをロジックに吸収させればいいので、データを参照する側は開発量を劇的に減らせるというわけです。実際にかなり重宝しています。
崎山氏:EBXはもちろんマスター管理に活用していますし、加えて各事業の現場担当者が取引先マスターを新しく登録する際の申請を一元化しました。新規登録・更新の責任部門、マスターの項目毎の分担がワークフローで明確になり、データ品質が向上しました。また、登録後はシステム毎に必要なマスターデータを自動連携します。
天田氏:いわゆる中央集積型のマスターデータマネジメントですね。例えば2024年1月、静岡県浜松市が行政区の再編を行ったので、浜松市に所在する取引先の住所変更作業が発生しました。従来だとそれぞれのシステムで変更を行っていたのですが、EBX導入後はマスターを変更すればそこから必要なところすべてにデリバリーされるので、漏れ抜け誤りのないデータメンテナンスができています。
データの民主化、データドリブンな組織の実現へ向けて、強い思いで進んでいく
―TDVとEBXを導入したことによる効果は見えてきていますか。
安川氏:先ほどのデータハブ的な活用法のように、TDVが入ったことで、従来できなかったことができるようになったのは大きいですね。既存業務の効率化は今後に期待したいですが、まずは新しいやり方に取り組めていること自体が効果だと感じています。崎山氏:EBXに関しては、基幹システムで持っている取引先マスターの機能を別のシステムに移管することと、データモデルを見直すことで、デジタル統括本部のメンバーの業務効率化が実現できています。
天田氏:今まで何か所にも目を光らせなければならなかった作業が、マスターデータマネジメントを中央集権型とするアーキテクチャへ転換したことで、EBXだけ見ながら進められるようになったという意味で私たちのシステム維持管理のポイントが減っていますね。
何よりもデータの整理ができたこと、データは整備していくという考え方が社内に浸透したのが良かったと思います。
―ジャパンシステムの支援体制はいかがでしたか。
天田氏:技術支援ということで、システムのかなり深い部分まで入っていただいています。製品に対する豊富な知見もお持ちですし、技術面でも私たちが知り得ないような専門的な知識をお持ちで、プロフェッショナルなサポートを受けられてとても感謝しています。
例えばTDVの特徴である複数のソースデータを統合する仮想ビューについて、データ民主化やシステム間連携を踏まえた仮想化というそもそものコンセプトは理解しながらも、やはりある程度のレスポンスの速度を求めたいところがありました。TDVの標準機能であるキャッシュデータベースを適用することで性能を維持しながら活用の幅を広げるなど、支援を受けています。
安川氏:いつも一生懸命やってくださるので、「工数が増え過ぎてご負担をかけないように」とこちらが心配しています(笑)。
―今後、TDVとEBXをどのように活用していきたいとお考えですか。
天田氏:TDVについては、当初の目的であるデータの民主化を目指して、現在の「リテラシーの高い一部の社員だけが使いこなしている」という状況を、「一部」ではなくもっと広げていきたいですね。「(デジタル統括本部に)頼んだらやってくれるんでしょ?」よりも「自分たちでやったほうがいい」と言ってもらえる、そのための教育の準備をしているところです。
現在は、どうすれば効率よく必要な技術や考え方を習得できるかを検証するために、私たちデジタル統括本部内の「現場から異動してきたデータ操作に馴染みの薄い社員」にトライアル教育をしています。
「基本的なSQLの読み書き」「ER図やテーブル仕様書の読み解き方」「BIツールの使い方」「情報セキュリティを意識したデータの取り扱い」といった基礎教育を実施し、その上でTDVを適切に利活用できるか効果測定をしています。次の期には一般社員からも希望者を募って、ハンズオンで数日程度のカリキュラムをこなしてもらい、問題なく利用できるようになった社員には、実際の業務内での利活用を開放するといったこともやっていこうと考えています。我々デジタル統括本部とは別に、各部署にキーマンを誕生させて、全社でのデータ利活用を加速していきたいですね。
EBXは他のマスターデータへ展開、拡張を進めます。取引先の次は「建物」に紐づくさまざまなデータを、例えばマンションの「部屋」、そこに紐づく「設備」、お部屋にお住いの「居住者」といった具合にマスターデータを段階的に整理し、メンテナンスしていきたいと考えています。
これが実現すれば、例えば「設備の交換サイクルに応じて適切なタイミングで営業をかける」といったデータドリブンな事業展開も見込めます。
冒頭でもお話ししましたが、経営層、特に社長は「アナログ対応」から「デジタル化・データ活用」への構造転換に対する強い思いを持っていまして。その社長のもと、EBXを通じてデータの再構築を進めていきたいと考えています。
―データドリブン的な組織を構築するプラットフォームとしてTDVとEBXを選んでいただき、我々も大変光栄です。TDVによるデータの民主化と共に、1日も早く実現できるよう引き続きサポートに努めてまいります。本日はありがとうございました。
大和ライフネクスト株式会社様 企業情報
2:ビル・商業施設等管理事業
3:建設業
4:警備事業
5:貨物利用運送事業
6:コールセンター事業
7:損害保険、生命保険代理店事業
設立 1983年3月8日
資本金 1億3,010万円
URL https://www.daiwalifenext.co.jp/
※掲載内容は2024年11月時点の情報です。