コラム

デジタル社会形成に向けて 第2章(12)~自治体DXの先に~

2023.01.10

訪問型行政サービスの効果測定を下記フローに沿って説明してきております。(下図記載)

訪問型行政サービスにおける効果測定フロー図1:訪問型行政サービスにおける効果測定フロー

前回からの続き~相関係数について

前回コラムより、「相関とは何か?」という話をしております。2つの事柄について、「関係がある」という状態を、統計上の用語である「相関」と、その(直線的な)絡まり具合を数値化した「相関係数」で説明しようとしています。相関係数は、以下の数式で計算されます。本来は、共分散も標準偏差も平均を取りますが、分子/分母で相殺されるため、省略しています。

分子:変数xと変数yの共分散(=偏差の積和)
分母:変数xと変数yの、それぞれの標準偏差の積
分子/分母を求める

相関係数の分子

分子のイメージを下記表1に図解します。まず初めに、変数xと変数yについてそれぞれ平均からの差分を計算します(偏差)。次に、変数xの偏差と変数yの偏差を掛け合わせて個数分の四角形を作ります。最後に、それら四角形の平均を取ります。実際のところ、偏差にはマイナスもプラスもあるため、変数x、変数yの偏差の組合せが「+×+」や「-×-」の場合、四角形はプラスの面積になりますが、「-×+」や「+×-」の場合、マイナスの面積になります。このようなプラスとマイナスの面積を足し合わせますので、マイナスの面積が大きければ、分子はマイナスにもなります。

相関係数(偏差の積和)表1:相関係数(偏差の積和)

計算した結果、上記数値例でも偏差の積和はマイナスになっております。
変数x、変数yの偏差の組合せが「-×-」や「+×+」になるということは、つまり、片方がプラスに振れているのに、片方が逆方向のマイナスに振れているということで、「逆向きの関係」と言えます。このように逆向きの関係にある変数x・変数yの組合せが多く観察されると(=マイナスの面積が多い)、分子がマイナスになり、「マイナスの相関がある」と言えます。

相関係数の分母

続いて、残る分母の意味を確認致しましょう。分母に登場するのは、変数xと変数yそれぞれの標準偏差です。若干紛らわしくて恐縮ですが、分子を計算する際に、変数xと変数yについて、それぞれの平均から差分を「偏差」と呼び、対になっている変数xの偏差と変数yの偏差を掛けて四角形の面積を計算しておりました。つまり、分母の計算は、変数xの偏差同士・変数yの偏差同士を掛け算(二乗)して面積を出しましょう、という話になります。

相関係数(偏差計算)図2:相関係数(偏差計算)

上記図2では、組合せc点(x:0.8, y:0.4)から、変数xの偏差=0.2(0.8-平均)を使って面積を描いています。二乗するので正方形になります。また、偏差がマイナスであっても(二乗なので)、面積は必ずプラスになります。図2では正方形を一つしか描いていませんが、数値例では、変数xと変数yの組合せが10組ありますので、変数xで10個、変数yで10個、合計20個の正方形が描かれることになります。最後に、10個のx正方形を足して、平方根を取れば、変数xの標準偏差が導かれます。

変数yについても同様の計算を行います。平方根を取る作業は、10個の正方形を足し上げると大きな面積の正方形ができあがるので、その一辺の長さを求めます。変数yの方でも10個分正方形を足し上げますので、それを平方に開いて、一辺の長さを求めます。プラスの面積の平方根を取るので、変数xも変数yも正になります。

これでようやく分母が計算できます。変数xと変数yの標準偏差(それぞれ正方形の一辺のイメージでした)を掛け合わせると、またもや四角形ができあがりますが、それが分母=標準偏差の積になります。

相関係数(標準偏差の積)表2:相関係数(標準偏差の積)

相関係数の算出

前置きが長くなってしまいましたが、やっと相関係数を計算できるようになりました。

相関係数  
分子: -0.18
分母: 0.59
分子/分母: -0.31

表3:相関係数(結果)

繰り返しになりますが、分子は、変数xと変数yについて、それぞれ、平均からの差分によって、四角形の一辺を作り出し、それぞれの四角形の面積を計算して、合計を取る。その時、辺の長さには符号があるので、違う符号を持つ辺の組合せが多い場合は、足し合わせた四角形面積もマイナスになる場合があります。

結局のところ、分子だけ計算すれば、相関について議論できそうな感じもあります。ただ、分子だけですと、プラス・マイナスの傾向しか議論できません。どんな数値例が来た場合でも、相関度合いを比較できるよう「基準化」しておく必要があります。そのために、分母で分子を割っておきます。

そのイメージとして、下記表4をご覧下さい。変数yだけ100倍してあります。例えば、元々変数xもyも単位がメートルだった所を、変数yだけセンチに置き換えた場合を想起下さい。結果、分子の面積=xとy共分散の値が変わっております。当然かもしれませんが、分子だけを見ていると、単位の変化などに値が影響を受けます。

相関係数(偏差の積和 単位変更後)表4:相関係数(偏差の積和 単位変更後)

相関係数(標準偏差の積 単位変更後)表5:相関係数(標準偏差の積 単位変更後)

当然の結果ですが、分母の結果も変わります。したがって分母を考慮に入れると、分子と分母の変動分が相殺されて、相関係数の計算結果自体は変わらない、ということになります。ぜひお手元でお試し下さい。

ところで、数値例から求めた相関係数の「-0.31」というのは、果たして相関があるのか、無いのか…?一概には言えませんが、「やや(負の)相関がある」という表現になりましょう。見方によっては「無い」と表現される方もあるかもしれません。その辺は議論しても仕方無いですが、数値で表現されるとありがたみがあります。

(以上)

コラムニスト
公共事業本部 ソリューションストラテジスト 松村 俊英

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